雪をいだいた富士は美しい。どこから見てもいい姿である。正月を過ぎてから背戸山からの冬の富士の制作にかかった。P20号の油彩である。ここの展望は昨年の夏、ちょうど明見湖の蓮を制作しているときに見つけた場所である。 夏の富士と冬の富士、雪のあるのとないのとの違いだけではなく山肌の色の違いからくる味わいが同じモチーフだとは思えないくらいである。溶岩の赤い地肌が向き出たような荒い表情の夏のものもいいが、おだやかな冠雪の冬も典型的な日本の美である。 背戸山から見下ろす風景には富士だけではなく現代のマンションや建物が所狭しと立て込んでいるのも付随してくるが、最初は気になったものもこの頃は軽く扱っていこうと決めてからは随分楽になってきた。そんなことよりも画面全体としての動きの方がずっとのしかかってくるのである。全体としての表情である。 この作品もなんどもアトリエで見直し、また背戸山まで出かけるという嫌になるほどの繰り返しであった。最近の絵は以前よりも確かに描き込みが増えている。それほど表現自体が重く、何か鈍いものを感じる、というところには陥っていないと思う。 #
by papasanmazan
| 2022-02-10 15:55
| 風景画
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今年の冬は去年より寒く感じる。富士の雪も去年よりも多い。美しい姿の富士は絵の主題には大変結構なことなのだが、戸外での制作は寒さで一苦労である。それに晴天であっても何故か山頂付近に雲が湧いて出てきたりするとせっかくはかどっている仕事も中断になる。風景画もなかなか一朝一夕には出来上がらないものである。 外での仕事ができない時はアトリエでの静物画である。これはコンスタントに続行できるのだが、さて一枚の絵を作り上げていくのは風景画も静物も同じように難しい。節分も終わったばかりだが、絵の制作には鬼は外、福は内とばかりにはいかないものである。 F15 号のキャンバスを縦型に使ってロダンの彫刻、カテドラルの複製品をモチーフにした静物画を描いてみた。このカテドラルもフランスにいた時からずっと試していたものだが、なかなか他のモチーフとの組み合わせが難しく、あるいはバラの花束と一緒に描いてみたり、果物と組み合わせてみたりしたが、思うようなものが出来上がらなった。 今回は取っ手のある花瓶と花や三つのカリンなどを使って、上から下に流れを作るように最初から考えてみたものである。頭の中ではバロック的な動きが欲しかったのである。こういう流れを作るには布などの模様も大切になってくるので、その選択にもかなりのまよいがあって実際の筆での描き初めまでにかなりの時間がかかった。しかし最初のモチーフの置き方は大切である。これを納得いくまで組み替えていかないと最後の仕上げまで続いていかないことが多いのである。 #
by papasanmazan
| 2022-02-05 08:07
| 風景画
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昨年の夏前に鳴沢の溶岩樹型に巡り合い、その溶岩と樹木の織り成す森に魅せられて油彩や水彩を連作してきたが、神戸での個展の前、ちょうど油彩の第四作目で制作が途切れていた。年が明けてから再びこの森で描き込んでいる。前にも言ったように他の場所では見られないような深い雰囲気に包まれた,まるで古事記の世界を垣間見るような森である。 富士山の噴火によって流れ出た溶岩に焼き尽くされた樹木の根の形がそのままに地中に残って大きな穴になっている。現在は指定地域になっていて、その穴の周りを厳重に鎖で囲ってある。上からのぞくと相当に深い穴である。そんな森の中で制作を続けている。昨年描いていたところから少し外れて、今度のところはそんな穴に囲いもないようなところで、後ろに退がって作品を見直すときなど危ないような気がしている。それに溶岩もゴツゴツと固まっていて、とにかくつまずきそうである。 しかし描いていて非常に面白い、大好きなモチーフである。今回はF20号のキャンバスに描いた油彩であるが、相当に描き込んだものである。何日くらいかかったのか、少なくとも10回以上は描き込んでいるはずである。もうこれで出来あがったかと思ってもアトリエで見直すとまだまだ、ということになって、また出直して描くのである。アトリエで手を入れることは全くなく、とにかく現場で描いている。決して自然そのままを写すことはないのだが、やはり自然の中で仕事をする。 この作品ももうほとんどツメの状態になったと思って家に持ち帰ってみたのだが、やはりまだ足らない部分がある、完全に出来上がった、とは思えないのである。気を入れなおしてもう一度溶岩樹型の森へ、そしてその日、15分も加筆しないうちに今日で出来上がると確信できた。なにが足りないのか、一つ一つを説明はできないが、作品全体がぐんと生きてくるのである。自然をもとにして自分の描いている画面が急に大きく見えてきたのである。
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by papasanmazan
| 2022-01-31 18:01
| 風景画
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今年の冬は寒いですね、とあいさつを交わすことが多いこの頃で、確かに戸外での風景画は少しこたえている。仕事の習慣で、必ず実際の風景を目の前にしてイーゼルを立てて描くことにしているので、手がかじかんで仕方がない。それでも我慢を重ねて描き加えていく、よほど古くさい仕事で、今どきの話ではなさそうだが、やはり習慣である。 そうして出来上がっていく富士の山や赤松の林の作品なのだが、気象条件が悪いときにはアトリエで静物画に切り替える。出来るだけ好きなモチーフを集めるように日ごろから目を配っている。やはり気乗りがするモチーフの組み合わせでないと最後まで描き切ることが出来ないときもある。そんなときは他の制作まで気乗りがしなかったりもするので、モチーフ選びは大切である。フランスからもかなり持ち帰って来た。 その中の一つ、少女の像と、神戸の展覧会の時にいただいた蘭の花を組み合わせた静物画、F10号がようやく完成した。リンゴと小さな砂糖壺も加えたものである。あまり細かなフォルムを描くことは避けて全体の存在だけを狙ってみたものである。 #
by papasanmazan
| 2022-01-27 17:37
| 静物画
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寒い日が続いて戸外での制作もなかなか思うようには進まない。これで二度目の富士山麓での冬になるが、昨年よりも今年のほうが寒いようである。地元の人の話だとこの辺りは二月に入ってからが雪が多いということで、風景の制作には思いやられる。それでもあちらこちらを見ているうちにだいぶ新しいモチーフを探し出せてきた。 おなじ忍野からの富士でも少し距離をとって離れたところにずいぶん描きやすい場所があった。以前の場所とは500メートルくらいの違いなのだが、足元が安定していて落ち着いて富士に向かえるのである。F30の油彩を描いている途中で水彩も描いてみた。水彩紙の新しいのが手に入ったので試してみたかったものである。 水彩は出来るだけ常日頃たくさん描いて、手も目も訓練しなくてはいけないと思っている。油彩のための習作などと考えている必要はない、画家は絶えず手と目と頭の同時作用が必要で、そのための水彩の活用だと思うのである。 #
by papasanmazan
| 2022-01-18 10:00
| 水彩画
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