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2014年 05月 16日 ( 1 )

椅子と楽器(完成)

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三十才代の後半、フランスに移住する少し前だったが、京都の博物館で雪舟の恵可断臂図を一人で長時間にわたって眺めたことがある。図は洞窟らしき中で岩に向かって座禅を組んでいる達磨(ダルマ)に対して弟子志願の恵可がその意志を伝えるために自分の腕を切り落として,それを達磨に差し出しているところである。

恵可は自分の不安を達磨に訴えるのであるが,今まで拒絶していた達磨は自分の腕を切り落としてまでその意志をしめす恵可に即答するのである、その不安を今すぐここに出してみよ、と。恵可はそれを聞いて直ちに悟りを得た、という図である。中国の禅の世界では達磨が初祖、恵可が二祖になっている。

広い博物館の中で、観客もほとんどなく、静寂そのもののうちに三時間ほど眺めていたのだが、急にハッとしたのである。これはまさしく現実だ、と。実際の場面に立ち会っているのだ、と。こういうところを禅匠にふっかけたら、お前は居眠りしていたんだろう、といわれるのがおちかもしれない。それはそうかもしれないし、それでいいとも思う。禅なり宗教なりではそれでいいのだろうが美の世界は違っている。感覚的なものだからである。恵可断臂が現実、リアリズムとして感じられる、それが雪舟の芸術なのである。雪舟の画面としての実在感だといっていい。その実在を見たというのがこれがまた私の実感につながっている。詩人のランボーはヴォワイヤン(見者)の説のなかで、詩人が見たものは見たのだ、といっている、まさにその見たものである。

いわゆる物を物らしく描いて実在感があるというのがレアリズム一般の考え方だろうが、それとはまた違った実在感というものがある。雪舟の画面でよく理解出来た経験であった。そういった静物画をめざしてF30号に古い椅子や楽器などを組み合わせて試みた制作である。いわゆる見栄えのしない絵かもしれないが、自分では納得いくまで描き込んだつもりである。それに個々の物に対しても説明的な要素はほとんどないと思っている。椅子の背もたれと脚の色と形におおいに苦労した。



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by papasanmazan | 2014-05-16 23:03 | 静物画 | Comments(3)