
水田に水がはられて田植えの季節になって来た。フランスにいた時は水田の存在などまるで忘れていたが、一昨年柚野からの富士などを手掛け始めたころからこの辺りの風景になじみだし、特に棚田には制作意欲がわいてきていた。それが今年の五月になって田植えが始まると初めて日本の典型的な風物を描こうと思い立ったのである。
段々になった水田と緑に囲まれたハーモニーは今までとは少し違った感覚で描き始めることになったが、描き進めていくうちにフランス風景で経験したことが蘇ってくるような気持ちになってきたのである。二重のなつかしさに浸された思いである。
気持ちをもう一度引き締めて何とか造形感を出していこうと制作したものである。M12号の油彩である。柚野の棚田にあらためて制作意欲を引き出されているこの頃である。