
家の近くの柚野から白糸の滝にかけては棚田の多い所である。日本の狭い国土を考えると棚田が多いのはうなずけるが、あちらこちらで棚田の名所があるようで、この柚野もその一つである。その棚田の向こうに大きな森をはさんで富士が顔ををのぞかせている。日本の情緒を感じる風景である。
あまり名所、旧跡を描いてみたいと思ったことはないが、この富士と棚田には惹かれてF10号のキャンバスに描いてみた。棚田から発想される様な情感やなつかしさといったような感情を表現しようと思うのではなく、画面上の明確な構成の一つの要素として考えてみたかった。
画面上部におおいかぶさった富士の容量を手前に配置した左から右上がりの角度を持つ棚田で受けていこうと意図したものである。棚田の細部に至る段々などにはあまり重きを置かないようにした。