
40年ほど前になるが富士山の周りを巡りながらかなりの数の油彩やパステル画を描いたことがある。富士の制作にとりつかれたのはそのとき以来である。ちょうど朝霧の大沢崩れの直後のことで、荒々しい地肌を見せつけられたり、忍野富士の雪の形に魅せられたり、本栖湖の深さを感じたりしながら最後に伊豆の方へ回っていった。
その伊豆の戸田や大瀬崎から海を挟んで遠くに見える富士の姿も油彩にした。かすんで見えにくい日もあったが満足できる制作だった。富士を背にして前に見えるのが愛鷹連山、その時初めてお目にかかったのである。
現在の青木平からは左にノッポの富士が位置して右に愛鷹の連山が視線を引っ張っていき、それが駿河湾の方まで続いていく。大きな、大きな美しい流れである。いくらでも画題が得られそうな場所に巡り合った。愛鷹連山 M15号で、初めての油彩である。