
杉木立の連作で前作のP20号に変わって今回はもう少し大きくP25号である。イーゼルを立てる位置も実景の杉木立から少し距離をおいて後ろに退がり、少し高いところから見下ろしたところに決めた。実をいうと自宅の玄関前である。いつものようにたくさんの荷物を車に積み込んで出かけることもないので大変に楽である。朝早く、ほとんど日の出の後すぐに制作に取り掛かれて、それもいい条件である。
制作面では今回はほとんどを杉の木立で占めていき、いわゆる空間をほとんど感じさせないのであるが、その分、二次元性を強めることになり、ここでいつも言うところのヴァルールの認識が必要になってくるのである。色彩の働きが画面全体にいきわたり、その総合としてP25号のキャンバス自体の存在が手のひらに収まってくるような感じが大切なところである。
ルーブル美術館で最も大きな絵画作品であるヴェロネーゼのカナの饗宴でもヴァルールの観点からいえば平面という意味では手のひらに収まっているといっていいのである。このあたりはボードレールのドラクロア論をよく理解していれば応用のきいた考えになっていくと思う。