
梅雨の季節になると小さいころよくびわを食べたことを思い出す.それほど美味しいと思ったわけでもなく、種が大きくてあまり食べるところがないなどと思いつつよく食べたものである。それがいつも梅雨のジメジメした台所で、何か仕方なしに食べていたのが記憶に残っていて、この時期になるとびわがいつもひっかかってくるのである。
そういったわけで6月ころにはよくびわの静物画を描く。ちょっと見るとただ丸いようなだけの形であるが,注視してみると何か人間の頭蓋骨を思わすような形に出くわす。これがこのびわの難しいところで、フランスでよく描いたアブリコとは違ったところである。
色もほとんどアブリコと変わりないように見えて、実はもっと深くて柔らかい色合いである。大きな葉っぱをどう扱うかが問題であるが、あまりその大きさや形にこだわることなく、びわの実の色にアクセントを加えるつもりで扱うようにしている。F3号の小さな画面である。