
家内と二人で一泊だけの小旅行、長野県の木曽郡の方へ出かけてきた。車で約三時間くらいの距離で、以前から名前を聞いていた寝覚めの床を一度訪ねてみたかったのである。木曽川とその河原の白い岩の堆積を見おろす景観で、浦島伝説の地でもあるのだそうだ。
南フランスでは赤い岩の堆積を何度も描いていたが、赤であれ、その他の色彩であれとにかく岩を描くのが好きである。この寝覚めの床も存在を知った時からすぐに制作の思いをはせたのである。長野県なら山梨の隣の県で、距離もさほどではなさそうだと思っていた。
それに木曽郡と聞いてはすぐに島崎藤村を思い浮かべる。藤村は機会があればしょっちゅう読み直すほど好きな大作家である。32巻の新書版の全集も持っていて、特に「家」や「エトランゼー」がいいと思う。もちろん「夜明け前」も読んでいるので是非この木曽郡は訪ねてみたかった。
一泊だけなので、場所探しがほとんどその目的だけになり、水彩画を一枚描いてみた。スケッチブックに少し鉛筆淡彩で描いてみるというようなことはせずに、水張りした水彩紙にかなりの時間をかけて描くようにしている。器用にサッと描き流すことが出来ない性分である。