アトリエから富士宮の方面に森の中を突き抜けて車を走らせてゆくと、鳴沢村を過ぎてから朝霧高原の富士が大きく現れてくる。新緑に囲まれた高原から富士の高みに視線がひきあげられて行く眺望は、いつも目にしている富士五湖周辺とはまた違った感覚である。
三十年以上前にもこの朝霧富士は何度か描いたことがある。ちょうど大沢崩れが起こったあとで、その亀裂に似たような山肌が生々しかったが、現在はその表面的な傷跡にはあまり目線が引っ張られずに全体的な山容をとらえることが出来る。
F10号のキャンバスにその全容をとらえて油彩にしてみた。この作品の前にP15号の冬の景色も描いてみたが、雪に阻まれて制作が進まず、途中の段階で終わっている。この分は来年継続することにして、新たにこのF10号の春の季節に入った次第で、それほどこの場所の眺望には惹かれるものを感じている。