
昨年に続いて今年も冬の忍野富士を大きさも同じくF30号に描いてみた。イーゼルを立てた場所が前回から少し変わり、手前の建物などの配置が違ってきて、描くのは今回の方がずっと楽になってきた。おそらく風景に慣れてくると言うのか、つかんでゆく感じが、いってみれば手に取るようになってきたのだと思う。
特に中景になる黄色の原野の部分が以前よりも描きやすくなってきた。富士の山の裾野と近景の林や人家の垣間見える部分を
つないでいくのに大切な部分になる中景が以前はここだけが妙に独立してしまっていた感があった。自分でもそれが分かっていながら何とか解決しようとすればするほどこの部分が重く、鈍くなる傾向があった。これはほぼ40年前に忍野で描いていた時から課題になっていたことである。そして昨年再開した忍野富士でも経験したことである。
この中景の部分のヴァルールを合わせようとしてあまりに筆触を重ねすぎて重くなったのが悪かったと気づいたのである。出来るだけ軽く、アッサリとおさめていったほうが裾野と林という上下の関係が結びついてくるのである。そのために絵の具の塗りも薄く、軽くしていくように意識してみた結果がこの作品になってきた。
こういった具体的な筆遣いや色彩に関する計算もそれほど重苦しく考えないでもよくなってきた。実際の制作ではなにか自分がどこかに行ってしまったような感じがするこの頃である。