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小さなミルク差し





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小さなミルク差しをほぼ中央に置いて、あとはピシェやカリン、カラスウリなどを無造作に配してサムホールの小さなキャンバスに静物を描いてみた。、ミルク差しとピシェはほとんど無彩色と言ってもよく、それに色を加えるために他の物を加えている。それらを大きなテーブルに並べて、そのテーブルの色を空間として扱ってみた。


バックとしての三次元の空間や、平面として二次元を現すのではなく、単に色彩の変化だけで空間処理をしてみたいと思ったのである。何かの物を使ったり、室内を暗示するような空間を作り出そうとするのではなく、色と色との透過によってできてくるニュアンスを期待しているのである。普通に言うところの絵というものからは離れてゆくのかもしれないが、自分の中にある欲求に沿って表現してみたかった。


音楽はたいへん好きで、とくに何故だか分からないが弦楽四重奏が一番の好みである。そして弦楽四重奏といえばもうベートーヴェンしかないと思う。1番から16番まですべていい。初期も中期も、そして深いふかい後期もいい。人によっていろいろ好みも違って、13番 15、16番などが人気なのだろうか、しかしどれをとっても音楽としての水準の高さに間違いはない。


ただ私個人としては特筆して14番を取る。なぜかというと他の15曲は全て音楽として聴いているのだが、14番だけはこれは音楽という物ではないように感じるのである。まずこういう音があってその次がこういう音に展開され、こうなってこうなる、という音楽の世界が14番では次の音が全く予想もされないような連続なのである。つまり音楽の世界の空間からはみ出てしまっているのである。


サムホールの小さな画面に14番のようなはみ出てしまったような空間が少しでも表現できれば、という思いの油彩である。

by papasanmazan | 2022-03-10 16:56 | 小さな絵 | Comments(2)
Commented by ヤマセミ at 2022-03-17 15:00 x
サムホールの小さな空間が、充実した色彩の音色で満ち溢れているようで素晴らしいです。本当にいい絵ですね~
Commented by papasanmazan at 2022-03-22 07:26
ヤマセミ さん、サムホールの絵でもこんなに難しいものかと思いなおさせられる制作でした。こういった試みはもっとやらなければならないと思っています。いずれ一つの制作方法として自分の中に何かが宿ってくるのではないかという思いです。
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