35年以上前に富士山を描いた経験で,忍野あたりからの雪の形がきれいだとはいつまでも忘れられなかったが、それとともに山中湖を挟んでみる富士全体の形も美しいというのも思い出のひとつだった。今度日本に帰って制作する時には是非とも富士と山中湖の風景、それもできるだけ大きく空間をとらえられるような構図を探し出して描いてみたいと思っていた。
偶然のことだがそんな場所をようやく見つけ出すことが出来た。平野というところから少し上がった所で、4WDの車で何とか油彩の道具も持ち運べる。さっそくF12号のキャンバスに描き始めたのである。富士山があってその手前に山中湖がしずかに水をたたえている。下手をすると俗な趣味に陥りそうである、それを打ち破るには結局造形性に頼るしかないと思うのである。
制作としては割に軽い筆触による操作が重なっていたが途中からはやはり描きこみが多くなって思っていたほどの柔かな画面がのぞめなくなってきてしまった。ただ構成的にシッカリとした組み合わせだけは出来上がったように思う。