
油彩で二点制作している間に水彩でも忍野富士を描いてみた。フランスにいるときからずっと水彩の重要さを感じていたのだが、やはり富士を描いていてもそう思う。決して油彩の習作としてではなく、一つの作品として大切である。自分としては特に画面上の動き、ムーヴマンをとらえるのには水彩の流動性が大変役に立つことが多い。
動きをとらえるのに二つの観点があると思う。一つは絵を描く対象になるモチーフに存在している動きであり、もう一つは自分の内にある動きである。客観的な動きと主観的な動きといってもいいかもしれないが、その二つの動きの総合なり分析をする時に水彩の流動性と透明性が役に立ってくる。
透明性を使って色彩の重なりの具合を確かめながらヴァルールをととのえ、全体として動きをつけていく、その制作の手順を追いながら一枚の水彩画が出来上がっていくわけである。決して対象物をそのまま写しているわけではない、音楽の作曲家が五線紙に向かっているのと同じ仕事である。