M3号という今まで使ったことのない大きさのキャンバスにすっかり葉っぱの落ちた木立の見えている冬の野原を描いてみた。冬枯れした野原や木立を描くのは好きで、シーンとした中にかえって色彩を感じるのである。原色や夏の強い光を受けたような強い色ばかりが能ではない、色彩はその調和と和音にたとえられるような響きが魅力なのである。
まだ美大を出てすぐの頃、実家のちかくの安威川沿いを冬の時期にぶらついていた時に,その河原とむこうに立っているクレーンとのなんとも味気ない色彩、ほとんど無彩色に囲まれた河原の枯れた黄色の風景に妙に惹かれたことがある、クレーンの立っているのが無機的で、風景自体も何の飾りもないようなもので、なぜか自分の心象と二重写しになったような気分であった。冬景色に出会うと時々その時のことを思い出す。
現在はそんな寂れたような心情はかけらもないが色彩に惹かれるのは今も同じである。ちょうどM3号のいい額縁が手に入ったので楽しみも含めて制作してみた一枚である。