
毎日、夕方になると犬の散歩に出掛ける。制作を終え、筆を洗って休憩し始めるとクリップ(愛犬の名)がこちらの顔をのぞきに来て散歩をねだってくる。朝には家内と、そして夕方と、日に二回の散歩を楽しみにしている。単純なものだが、そのつどかわいいものだと思う。
冬の時期になると、枯れたブドウ畑の下にダイコンの花が咲き乱れて、一面真っ白になっている。ひとつひとつの小さな花をよく見ているとどれも美しい形をしている、そしてそれが重なり合って、まるで白いカーペットのような野原である。
観賞用の色とりどりの花もきれいだが、自然の中に染まった野の花は格別に好きである、どの花を見てもすぐに描きたくなる。この夏には黒地の紙にパステルでエニシダを描いたが、同じ趣向でこんどはダイコンの花を描いてみた、黄色が白色になったのだが、どちらもクリップの散歩と同じような単純さである、しかしこの単純さに何か大切なものが隠されているのではないだろうか。