
先日の投稿でアザミとエニシダのパステルを紹介したが、こんどはエニシダだけを描いてみた。久しぶりに黒い紙を使ってパステル画にしたものである。
黒い地に描く時はかなり色が吸収されて、色彩自体が落ち込みがちなので、意識的にひと調子高いトーンで描いたほうがよさそうである。それからやはり黒という背景に物を表現していくので、へたをするとケレン味がかってしまって美しさが損なわれるような気がする。いつもそのあたりのことを気遣いながら黒地をあつかうようにしている。
このエニシダの花の形は大好きで、同じような豆科の花をパステルで時々描いたりする。丸や三日月型のつながっていく形の総体が好きなのである。ただこれも要注意であって、好きなモチーフだけに時として感情移入しすぎてしまうのである。感情移入が悪いというわけではないが、自分としてはもっと画面の自律性を大切にしたく思っている。美術作品の好き嫌いで言っても感情移入が前面に出てくるような作品は余り好きではない。
ヴォリンガーの抽象と感情移入という本は美学のうえで大切なものである。抽象と感情移入を対立した概念として捉えて、現代絵画の考え方に大きく寄与しているが、抽象絵画といえども、見ているとその中に随分感情移入されたようなものもあると思われる。私が余り好きではないという画面はそういったアイマイさを感じさせるものをいうのである。