
マザンからブナスクへ抜ける道の途中にマルモールの村がある。ここも人口は少ないが、最近少しづつ新しい家が増えてきた。どの村も人口増加、新築ブームである。南フランスに住んでもう15年以上になるが、大分趣が変わってきて、新しさが目に付くようになってきた。バスの便などが多くなって、生活面の改善もあるかもしれないが、なにかかつてののんびり、ゆったりした雰囲気が懐かしい気がしてならない。
マルモールの教会や村を見渡すこの景色を描くのは記憶違いでなければこれで三度目だが、最初の作品では村全体が地面の中に沈んだような具合になってしまい、全くの失敗に終わった。二作目にかかる時に何故そのような失敗に陥るのか、かなり考えてみたのだが、もう一つ原因がよく分からなかった。
この三度目のF4号の制作の途中でその原因がはっきりとつかめた。背景にあたるダンテル・ドゥ・モン・ミライユの山の調子をうんと押さえていかなくてはならないのである。今までの制作では、要するに村や教会、手前の林、そして背景の山が余りに一本調子過ぎて、メリハリがなさ過ぎたのである。そのために建物の群が沈み込んでいったのだと思う。
この作品で一応の答えは出たように思っている。