
今年もアーモンドの花が咲いて、プロヴァンスにも春がやってきた。暖かい日が多く、いつもより花がいっせいに咲き出したような感じがする。我が家の庭にも毎年決まったように、別に植えたわけでもないのにクロッカスの花が咲く。そしてやはり庭のあちこちにスミレの花が群がって咲いている。
毎年描こう,描こうと思いながら,ついほかの制作に追われてそのままになっていた。今年はようやく小さいパステルにすることが出来た。こんなちょっとした仕事でもやってみれば結構な労力で、また出来上がってみれば楽しいものである。思い入れるようなことはことさらないはずだが、なんとなく愛おしいような気もするのである。
谷崎の細雪の中に、毎年花見の頃になって、美しく着飾った姉妹が、今年こそこれが皆で出かける最後になると思いながら,ゆく春を惜しむ、といった情景がある。惜春という言葉の持つ日本語の美しさを存分にあらわしている。こういった言葉も現代では死語になりつつあるのかもしれないが、やはり春になればみんな花見にも出かけ、暖かさを喜ぶ感情は残っているはずである。