
F3号のキャンバスを縦型に使って三つのリンゴをモチーフにして静物画を描いてみた。こういった単純な組み合わせで、見た感じも、描く感じも構成的なのが大変に好きである。白い布の上に置かれたリンゴ三つ、背景に赤を主にしたチェックの布、それにテーブル代わりの小さな椅子だけが構成要素である。
アダムとイヴの楽園追放の旧約聖書から、ニュートンの万有引力、そして静物画のセザンヌ、どこまでいってもポピュラーなリンゴだが、これが描いてみるとなかなかに難しい。たとえば三つのリンゴを描くとして、三人の人間がいればそれぞれ性格も表情も違っているのと同じくリンゴにも個性はあるはずである。同じ赤い色をしていてもその赤の中にも違いを見つけるだろう。そういったそれぞれの持っているものをつなぎ合わせながらおのおのの固体としての特性も表現していく。
しかしなんと言ってもまずは三つを使っての動きをよく考えてみる,その内の二つは接し合い、重なり合わせ、残りの一つは少しその二つの群から離し気味にする、それでもってジグザグに上から下にと目線を引っ張っていく。そのためにまずはキャンバスの使い方を縦型に決めていく、狙いはただそれだけの話で、あとは実際の制作を進めていくのである。