
在仏三十周年の個展を芦屋で無事に終え、一ヶ月ぶりにマザンに戻ってきた。多くの方々に作品を見ていただき、お話を伺ったり、近況をお知らせいただいたりして、いつものように充実した日本滞在であった。皆様方にお礼申し上げます。
十月の半ばに日本に発つ前から、この夏の大阪に大きな被害をもたらした台風で、ストックしていた額縁のかなりの数がだめになっているという情報が大阪の息子からもたらされていたので、それなりに覚悟はきめて一時帰国したものの、実情を見て愕然とした。二週間後に迫っている個展の準備と同時に被害にあった額の整理をしなおさなければならない。どこから手を付けたらいいのか最初はとにかく放心状態に近かった。
先ずは額でうまった家内と私の部屋を確保し、使える額を選び出し、個展のための新作を額装し、毎日やれるれることだけをする、ただそれだけの一ヶ月の日本滞在だった。
その間に神崎川の川岸にある大阪東淀川区の大型ごみ処理施設に申し込んで処理した古い額縁は210kgにのぼった。すべて自分たちで持ち込んで焼却してもらうのである。
いつもは少し余裕を持ってむかえられる作品の飾りつけも、やっとぎりぎりの日程の中で何とかこなした状態で、初日の三十周年を記念したささやかなオープニングパーティでも疲れた顔をお見せしていたのかもしれない、申し訳ありませんでした。
個展をするための帰ったのか、額の整理をしに帰ったのかよく分からないままにフランスに戻ってきたのだが、これからのメドは少しつかめたのは確かな今回の帰国であった。写真の絵はやはりこの個展に出品したサムホールのマザンとヴァントゥー山である、今は家からこの実景がよく見えている。