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バルーの松と城




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南フランスに住んでもう15年になるが、いまだにその美しさは尽きないままでいる。初めてこんな近くにバルーの城があるのに気づいてから、角度をいろいろ変えながらかなりの数の油彩や水彩を描いてきている。なかでも城やバルーの村の全景が見渡せる小さな礼拝堂のある丘からは手前の松の林も取り入れた構図が格好で、大変に気に入った場所である。

最初にこの場所で制作したときのことは今でもよく覚えている。M25号の横型に城や村の俯瞰図を描いたのだが、喜び勇んで始めたものの、途中からその難しさに四苦八苦して、ようやくあえぎあえぎ仕上げたものだった。特に手前の松の重なりが難題であった。

以来この構図はもう一度必ずやってみようとづっと暖めていた課題である。それに加えてもう一枚、この城からづっと向かって右のほうに展開していく村の姿も松の林を配しながら描いてみる、つまり右双,左双の二双の油彩にしてみようという試みである。大きさは共にM25号である。

まずこの出来上がった城と松の絵であるが、最初に描いた時から十数年の隔たりがあるので進み方が完全に違ってきている。目の前のモチーフになる風景も、使っている材料の油絵の具や筆など何の変わりもないのだが、進むスピードがまるで違っているし描いている本人の心構えも遠くへだった感じがする。先日このブログに載せた笠松と丘のときに感じた一つのエポックと同じ感覚でつながっている制作である。何か同じ通奏低音がづっと鳴り続けていような気持ちでの制作であった。

右双の作品は五日ほど遅れた描きはじめで、今制作半ばである。




by papasanmazan | 2018-05-21 02:49 | 風景画 | Comments(2)
Commented by みみずく at 2018-05-21 22:16 x
適当な言葉が見つからないのだが、堂々とした一つの画面とでもいうか、以前に拝見している「バルーの城」とは違う画面。全体が一つになって二次元性を保ちながらそれでいて距離感がある。そうか!セザンヌの絵の本質はこれだったのか…東洋と西洋を融合した画伯のエポックの始まり…こう云うことだったのか!右双の作品が楽しみだ。
Commented by papasanmazan at 2018-05-26 01:04
みみずく さん、笠松と丘の作品の頃からおおよそ同じような感覚で制作が続くようになっています。一つ違った空間にさまよいだしているのかもしれませんが、今まで引っ張られていた何かから解き放たれたような気分になってきました。
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