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冬の原



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宇野浩二の小説に〔枯木のある風景〕というのがあって、若い頃に読んだのを記憶している。主人公は実は洋画家の小出楢重で、小出の晩年の作品の題名が枯木のある風景であるところからこの小説の題名になっている。宇野浩二も小出楢重も共に大阪出身である。


話の内容は登場人物が当時の信濃橋研究所で小出とともに指導者だった鍋井克之や黒田重太郎などが登場して、小出亡き後の話をつづっていく、その中でもとりわけ遺作といっていい枯木のある風景のすさまじいまでの小出の天才性が浮かび上がってくる。日常生活と芸術との葛藤や、普段は座談の名手といわれるほどのオモシロ、オカシイ面の裏に隠れた研ぎ澄まされたような創造力、そういったエピソードを交えながらの枯木のある風景をめぐる小説である。

この絵の風景は小出のアトリエのあったごく近くの実景をスケッチしたものだそうで、芦屋風景である。電信柱が高く立っていて、電線には人らしいもが腰掛けている、なんだかよく観ると少し妖気さえ漂っているようで、まるで遺書を読んでいるかのような絵である。小出自身は、芭蕉の世界や、現実と空想のミックスや、といっていたそうである。

何もいい風景を求めて遠くを探すばかりが能ではない、身近にもきっと何かがある、私も目の前の冬の原っぱを描いてみた、P10号である。

余談だが興味がある方には小出楢重随筆集(岩波文庫、緑115-1)の一読をお勧めする。下品なのはちょっと、といわれる方には少々目をつむっていただいて、オモシロいこと請け合いである。挿絵も絶品である。




by papasanmazan | 2018-02-28 03:47 | 風景画 | Comments(0)
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