
毎年アイリスと芍薬が庭に咲く。ほとんど手入れもしないのによく咲いてくれる。いつもはアイリスが咲き終わってから芍薬が咲き出すのだが、今年はどうした拍子かアイリスの咲くのが遅く、ちょうど芍薬の咲くのと同時になった。
今まではそれぞれを別にして描いていたものを今年は一枚のパステルにしてみた。かなり離れた場所に咲いているので仕方なく切花にして花瓶に挿してアトリエで描いたものである。せっかく咲いている花を切るのは家の花であろうと、野に咲いているものであろうとかわいそうな気がしてならない。こうして絵のモチーフにするかぎりは出来るだけいい作品にするしかおわびのしようがない。
まだ子供が小さかった頃、パリにいた時の幼稚園の友達だったフランス人の母子や、その幼稚園の先生がエポンヌに引っ越した我が家に遊びに来てくれたことがある。皆でお茶をした後で城跡の大きな自然公園に散歩に行ったときのことである。ひとりの母親がそのあたりに咲いている野の花を摘みだしたのだが、それを見ていた先生が、私は自然をそのままにしていたほうがいいと思う、と自分の意見を言った。するとその母親が急に恥ずかしくなったのか、その花をその場に捨ててしまったのである。すると先生がその花をひとつひとつ拾い集めて、せっかくだから家で花瓶に挿してあげましょうと持ち帰った、今でもこのときのことを忘れられないのである。

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