毎年春、秋と一週間づつ海の近くにヴァカンスで出かけて制作することにしているが、今年もシオタ、カシィ方面で過ごしてきた。国立公園のキャランクは岩あり、崖あり、そして美しい地中海が魅力で、シオタ、カシィはその真ん中の港である。
シオタの風景ももうお馴染みになってきたが、今回は思い切ってうんと高い場所から何のさえぎるものもない地中海を抱き込んだ湾とシオタの全景をF15号に描いてみた。
手前に木の茂みや幹の交錯したものなどを通して向こうを見る、といったような複雑で入り組んだような構図はいわゆる閉じられた空間といえる。それにひきかえこういった全景をそのままに押し出していく制作は開かれた空間とでもいってもいいだろう。この開かれた空間の表現には技巧的な小細工があまりもちいられないのである。物と物の接点とその奥にある深い空間などを表わすときに使っていく転調などの筆さばきなどを見せられないのである。
いわゆる大きな広々としたところを筆でさばいていくのがこのような開かれた空間での仕事になるのだが、これは案外難しいものである。下手をすると何を描いてももりあがりのない演劇のように退屈な表現に陥ってしまう。
にほんブログ村