先のレ・ボーと白樺を描いたサムホールと同時に、これはサムホールの制作場所よりももっと後退した見晴らしのいい場所でももう一枚描いてみた。レ・ボーの全景が見渡せてしかも少し前にやはりあの白樺の木が見えている。パノラミックな形が欲しくキャンバスは12号の1対2の細長い特殊なものを選んだ。こういう特別な大きさは奇をてらったような絵面(えづら)にならないように気をつけねばならない。
作品としてはとにかく眼を左右に動かして広さを狙うのが一番である。もちろん白樺の木とその奥になるレ・ボーの岩山や天然の要塞との距離感、空間、またオリーブや松の緑との調和、添景として小さくみえている石造りの小屋など絵画要素はふんだんにある。こういった実景を自分の眼で確かめながら描き進めるのであるが,決してそのままを写すわけではない。自分の画面に対する考え方を前提にして必要なもの。不必要なものを選定していくわけである。