
毎年秋には日本に一時帰国して一週間の個展を開いている。今年も横浜で11月の第一週目がその期間だったのだが、いつもの年よりも期間が早く、また日本での滞在も一ヶ月にして切り上げたのでフランスに戻ったころはまだ秋の季節であった。久しぶりにブドウ畑や山々の紅葉を楽しむことが出来た。それに気温も例年よりも暖かく、なにか日本の生活ペースの速さから解放されたようであった。
廻りの景色もいつもフランスに戻ってきた時よりもづっと緑が多く眼が休まるのである。ひと月ぶりのヴァントゥー山が家の前にそびえている、これはと思い立って約束していた油絵の制作を、場所は小さな水彩で試していたので迷うことなくF8号のキャンバスに始め出した。マザンの教会や村の様子も澄み切った秋の空気の中で手にとったように確かな感触がする。
非常に気持ちの引き締まった、それでいて快い制作の連続であまり滞るところがなかった。むかっている対象の山、村、畑や空を大切に見てはいるのだが、それほどそれら個々の物象にこだわるようなことがなくなってきたような気がする。その分いままでよりはずっと自由な気持ちを保ちながらの仕事になってきたようで、有り難いかぎりである。
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