
この何年か春、秋と一週づつ地中海の海を描きに出かけることにしている。家内と犬も一緒で、私が仕事をしている間、彼らは自然の中を散策している。ときにはいい風景を見つけてきてくれたりもして、次の仕事につながったりもする。
この秋はサン・トロペを訪れた。町は全くの観光地で、人が多くてざわざわしている。一等の観光地というふれこみだが、ただ俗なだけという感じがしないでもなく、とても制作をしてみたいというような気はしない。よく絵に描かれている教会なども場所は決まり切ったものである。
ところが車で町を離れたところを見ていると目につく笠松がとにかく美しい、それに数も相当なもので、これは以前見たローマの松に匹敵する。今回描くのは笠松だ、と直感した。まずはP10号に描いた油彩である。むこうにサン・トロペの外海が見えている。笠松の林が海の方に向かって延々と続いている。
描けばこの緑の表現は難しいだろうなというのは分かっていた。とにかく鮮やかな緑で、自然の中ではその存在が調和しているが画面の中でこの緑の連続となるとまるで目をむく絵具そのものの色になってしまうからである。そこのところを用心して、絶えず自分の目をよく使って確かめながら、天気のいいのを頼りに現場で完成させた一枚である。
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