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坂の上の松

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フランス語にincontournable(アンコントゥルナーブル)というのがあって日本語に訳すと、避けることができない、無視することができないといった意味の言葉である。議論好きのフランス人はテレビの政治討論などでよくこのincontournableを使っている。どうしてこの言葉を持ち出したのかと言うと、このF8号の絵が私にとって避けることができないような,そういう気持ちで描き始めたからである。

昨年の個展の前、バルーの城や松を描いていた時にこの坂道と松の風景を見つけて,その時に何かハッとするものを感じ,それ以来気になって仕方のない画題であった。今度、個展が終わってフランスに戻ったら真っ先にこの風景を描こうと決めていた。

ごく当たり前の風景で,色が特に美しいとか形が面白いと言ったわけでもない。構図のダイナミックなところもなければ動きや流れの魅力があるというわけでもない。自分でも何にハッとしたのか分からないがやはり避けては通れない風景である。そこに思想や言葉で現せるものはなにもないのである。しかし画家である私にとっては大変に重要なことであって,どうしても実現させなければならない画面である。たとえばボードレールが夏の腐肉を歌ったようにである、偶然に遭遇した腐った肉はボードレールにとって選択の余地のない,絶対的な,避けて通ることの出来ない詩題なのである、それだけの話であってそこに思想があるわけではない。それならば感覚か、といえば一概にそうともいえない、もっと芸術家の本質を貫く存在の根本のようなものなのかもしれない。

絵画についていろいろな考えもあるだろうが,私には言葉や思想など何の興味もなければ、そういったものが絵の発想につながる、といったようなこともいっさいない。むしろそういったものを排したところの色と形の単純な根本だけを問題にしていきたい気持ちだけが強いのである。

出来上がったものはこんなものである。何の変哲もない、派手さも奇を衒ったような手の込んだものでもない、単純な一枚の絵であるが、私は好きである。描き進むにつれ随分不要な部分が消されていった。前まえからこういったものを描く必用を考えていた。何事も経験である。




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by papasanmazan | 2015-02-11 20:12 | 風景画 | Comments(2)
Commented by カワセミ at 2015-02-15 19:35 x
何がどうと云えないのに 何かしらひかれる作品です。拝見している側は作者の思いとは見当違いの所で見ていることが多いのだろうけど この作品のように何の言葉もなく”いいな~”と見とれているのもいいですね。
Commented by papasanmazan at 2015-02-17 19:52
カワセミさん、後悔先に立たずで、もっとこういった構成のしっかりした、強い絵を勉強しておくべきでした。表面的ではなく、内部からの芸術衝動をよく見守っていなかったのだと反省しきりです。
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