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アムステルダムの美術館

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今年の春、マドリッドのプラド美術館を訪ねたのに続いて、先日、三日間アムステルダムでレンブラントの夜警とゴッホ美術館を家内と二人で堪能してきた。ゴッホについては日本での展覧会やオルセーの作品などを既に数多く観てきているが、夜警についてはこれが初めてであったし。今回は特にこの作品だけを主眼にした小旅行だった。

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やはり思っていた通りの深い作品で、如何にも西洋絵画の名品にふさわしいものである。三日間とも朝一番から観に行けたので、人が混み合ってくるまでのほとんど午前中いっぱいは静かな中で観ることが出来、だんだんにその色彩の美しさも目でとらえられてきた。かつてのヴァニスにおおわれた暗い画面も、そのヴァニスを拭いさる修復後の色彩の復活で明るく輝いたものである。いろいろなエピソードを持った作品で、それだけでも有名さを物語るようなものだろうが、人を魅きつける作品のもつ実在感はやはり超一級のものだと感じた。

なるほど明暗の世界には違いないのだが、決してあいまいな明暗描法ではない。あくまで絵画の持つ色彩の世界なのである、ただその固有の色彩で強調された部分から暗部に転調されるところに描け込むんでゆく透明色の働きが如何にも西洋絵画の特質である明暗描法を思わせるのである。そしてその透明な描法が背景の暗さや人物群像のつながりのあいだ、あいだに施され、やがて一枚の巨大な夜警という作品を創り上げている。とにかく代表的な西洋の精神だと思う。

若い頃、シュペングラーの西洋の没落という本で西洋の精神はかなり教えられたように思っていたが、現実にレンブラントの代表作を目の当たりにすると、自分の眼を信ずる他はないと思った。それほどに自分はもう若くはないし、観念的な観かたではないということなのであろう。その作品の持つ実感のほうがよほど重要に思われる。

そういった哲学や心理学めいたものから離れて、この目の前の夜警という名作と、この春やはりつくづくと眺めいったヴェラスケスのラス、メニナスとが頭の中を交叉する自分のほうが今の実感である。もうレンブラントやヴェラスケス、リューベンスなどといったところになると、作品にあらわれてくる違いというものはこれはそれぞれの画家の性格の差なんだと思い当たった。

アムステルダムの天気はづっと悪かったが、美術館と魚介類のレストランで充分に短いヴァカンスを楽しめた。



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by papasanmazan | 2014-10-24 09:28 | 美術の歴史 | Comments(3)
Commented by desire_san at 2014-10-24 18:49
初めまして。
来年アムステルダムの美術館に「夜警」を見に行きたいとおもっていましたので興味深く読ませていただきました。
やはり光と影の表現と微妙な色彩表現がすばらしいようですね。
ブログを拝見して、必ずこの作品は見たいという気持ちがつよくなりました。
ありがとうございました。
Commented by papasanmazan at 2014-10-24 19:15
desire sanさん、ブログを見ていただきありがとうございます。レンブラントだけではなくフェルメールのいいものなどもあって、アムステルダムも印象の深いところでした。運河を巡ったその街全体の環境などと絵画の雰囲気はよくマッチしています。お楽しみください。
Commented by ono7919 at 2014-10-24 20:20
こんなに明るい絵だったんですか!画集や写真でだけしか見ていないのでもっと暗いイメージがありました。ヴェラスケスの「ラス・メニナス」同様天井付近の暗い部分がこんな風に描かれていたとは想像もつきませんでした。ヴェラスケスのキリッとした空気とは違い柔らかな感じが以外です。一度本物を見てみたいものです。
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