![]() 三年ぶりにイタリアの美術館を巡ってきた。前回と同じローマ、フィレンツェ、ミラノと,旅程上一日だけ観光でヴェニスに行ってきた。観た作品も三年前とほとんど同じである。結局はダ、ヴィンチとミケランジェロにつきていると思って出掛けたのだが、やはりそうである。代表的にいえばミケランジェロのシスティナ礼拝堂の天井画、ダヴィデ像、それに今回の一番の目的だったダ、ヴィンチの最後の晩餐これだけである。 前回で様子は分かっていたので特に最後の晩餐だけは三回、十五分づつながら予約を入れて観ることにしていていたので、これは満足した。そしてそれに対して彫刻家としてのミケランジェロのダヴィデ像。この二つの比較が特に面白かったし,これからもずっと頭から去らない問題だろうと思う。 三年前のイタリア旅行中にホテルで喉の調子が悪いのに気づいた。家に戻って病院で喉の癌だと分かった。アヴィニオンの癌センターに入院していたある夜、目の前にダヴィデの像が立っている,これは夢だなと思いつつまたもや見惚れていた経験がある。それもそんじょそこらの夢ではなく,全くのレアリティといっていいほどだった。そのことは入院しているときだけではなく今も時々思い出すほどである。それというのも三年前の初めてみたときのこの彫刻の圧巻のたまものなのであろう。彫刻の本質が明確にわかる強さ、まわりの、特にこの場合はこの像をおさめてあるドームの高さいっぱいにまで広がる空間の決定力、筋肉の流れ,特に腹部の左右の動きから腰を通って足の太もも、足先に至る全体の流れ。それらが大変に誇張されているにもかかわらず観ていて自然でもあるし、何度見直しても目線はその動きを追っかけさせられるのである。 手や腕、その間の胸とのお互いがつくり出す空間も美しい。立像自体の空間、それを取り巻く大きな空間、部分部分の空間、観ていていくら時間があっても足りない感じがする。それに加えて例えばデッサンをするという観点に立てば、この像を部屋の入り口、一番遠くのところから見ているとその白黒,灰色などのトーンが大変に美しい、特に両足の内側左右の黒のトーンの強さといったらこれほどのものはないと思われる。 彫刻家ミケランジェロを見ているとそのそれぞれの作品の中にミケランジェロその人は安息しているし幸福でもあるのだろうが、画家ミケランジェロとなるとそうはいかない。システィナの天井画などでもそれぞれ美しく、超一級のものとは分かっていても、それらの作品を見ているとミケランジェロの隠れる場所がない、そういった余裕が感じられないのである。彫刻作品ではどれほど力がみなぎった作品であってもミケランジェロとしては自家籠中であって、余裕もあり、その人の姿はどこにも見えないが、絵画作品になるとミケランジェロの苦痛感が垣間見られるような気がしてならない。 それに比べると最後の晩餐はどうか、ここには同じ絵画であっても全く違っていて、ダ、ヴィンチの影は跡形もなくなくなっている。ただ一つの壁画、近代以降でいったなら一つのタブローが残されているだけである、しかも完璧なタブローである。作者の姿などどこにもない。 ふつう、一つの作品を見るのにも眼が慣れるまでに時間がかかるものだが、今回の最後の晩餐に対しては最初から直ぐに入り込めた。その部屋に入り、作品を目にするなり直ぐに完璧な平面だ、と声が出そうになった。 一枚の同一平面のなかに同時空間が表現されている、この場合はたまたまダ、ヴィンチが最後の晩餐という劇的場面を選んだのであって、使徒のそれぞれの表情がどうのとか、動作がどういう心理を表している、等、こういうことも一つの鑑賞の仕方だろうが私には余り興味がない。それよりもこの作品を、これも入った部屋の作品の置かれた位置から一番離れた、反対側の作品の前から眺めるのがいい。この作品程離れれば離れる程大きさを感じさせるものもない、 モナ、リザなどにもみられるスフマートともよばれるぼかしの技法でダ、ヴィンチの絵画は非常に柔らかい。しかし決して湿っぽくもないし、その空間はカラリとしたものである。現代のアクの強い原色などよりもづっとドライで、それでいながら柔らかい。 ![]() にほんブログ村
by papasanmazan
| 2013-09-11 17:45
| 美術の歴史
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