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冬の木々


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冬になると葉を落とした木々の姿が美しく空間に映えてくる。毎年のようにそんな姿を制作しているが、今年もF20号の大きさで油絵にしてみた。今までは木々を通して遠景に家やその他の道具立てになるようなものを取り入れて絵にしていたのだが、今回はまったくそういった飾り立てはなく、まったくの木々の姿だけである。


つまり絵にするという意図ではなく、ほとんどが自由な生成にしたがって、自分の意志というよりももっと違った、何か遠いところを見据えたような気持ちで終始制作してみたのである。説明的な要素もあまりないので、どういう具合に制作が進むのか自分でも不安はあったが、思っていた以上の成果が出てきたようである。


最近よく読んでいるもので、特に老子に魅かれている。若いときから禅の本はよく読んできたが、それが老子を読むのに大変に役立っている。自分というものを立てない、終始一貫その自分のないところを求める、そこに道がある。その道、それを良く掴み取れば全てが上手く行く、何の不安もない道である。


その第二十二章の最後の句、〔誠に全うして之を帰す〕、よく道をわきまえて最後は自然の中にそのまま帰る、といったような解釈でいいと思うが、そのような自然な自分というものを絵にすることが出来れば、といったような意志でこの作品を描いてみた。




by papasanmazan | 2018-01-30 01:43 | 風景画 | Comments(4)
Commented by motoko at 2018-01-30 14:14 x
「自分を立てない……何の不安もない道……最後は自然の中にそのまま帰る」
老子の奥深い言葉と一体化したような絵画ですね。

目の前の風景に身を委ねて描かれた木々の、
柔らかく自由な、そのままの姿とひんやり沁みる冷たい空気を感じています。
Commented by papasanmazan at 2018-01-31 10:42
motokoさん、若い時の読書とは違って最近は自分の現在に照らし合わせたような内容の読書になってきました。知識欲だけでは味わえない豊かさを感じます。出来ればそれが自分の制作に何らかの高揚されたものを与えられれば、と願っています。
Commented by みみずく at 2018-02-02 19:59 x
面白い絵だ! 具象とか抽象とか そこらへんの表現方法ではくくれない別の次元の絵のように感じる。自然が放つそれぞれの色が 消化され新たな色彩となって画面を構築する。そこに作者の意思があるのか無いのか そんな事などどうでもいい新鮮さだ。
Commented by papasanmazan at 2018-02-05 03:42
みみずく さん、確かに抽象や具象という範疇では割り切れないもの、そういうものがあっていいはずです。画面というものは言葉で言い表せないもので、どういう風に言葉で言っていいのかわからない、というような意見が出てくるような作品でありたいと思います。そのどうにも言葉にならないということが造形美術の特質といっていいのではないでしょうか,そうでなければ文学との差がなくなってしまいます。
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