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サントン人形(第二段階)

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もう四十年以前になるが、はじめて東京の西洋美術館でベラスケスを観たのが本当に感動するという経験の始まりだった。よく感動するとか感激するとかいうことを耳にするが、色々美術作品を観ていても私にはそれほど感動するということはない。今までの経験でもほんの数回にすぎない。ただその数えるほどしかない感動はいまだに、そして永遠に忘れられないものである。

二度目に観たベラスケスは、これは大阪でなのだが、今回プラド美術館で再会した皇女マルガリータであった。心斎橋のデパートに三度足を運んで、とにかくこの絵だけを長時間眺め続けたのだが、最後の最後まで、もう一歩というところで理解出来なかった。本当の意味の感動というところまで至らなかったということである。一度そういった感動ということを経験すると自分でその状態をおぼえているので判断がつくわけである。

とにかくベラスケスの作品の深さは格別である。とても画集で見ていたような薄っぺらいものではないし、またあの色は写真では無理なのではないかと思われる。ラス、メニーナスの天井や奥の壁、そこに掛かっている絵などの、透明感に支えられた空間の表現などはよほど時間をかけて眼をならさないと見えては来ないものである。距離をとって、ほとんどその部屋の一番離れたところあたりから二日間見つづけてようやく見えてきた。一度見えてくると、そこには今度は実在感しかないのである。禅の悟りと同じようなものである。、いちど分かると全てが分かる。この存在は絶対である。どうしようもないものであって、現前と存在する。ただそれだけのことである。幸せとはこういうものだと思っている。

ルノアールは皇女マルガリータのリボンの赤に絵画の全秘密がある、と言っているが、今回プラドで観たラス、メニーナスでは私は黒色に魅かれた。画集で見ていた時とは違って、随分完全な黒を使っている。ベラスケスの柔らかなモデリングからはとても想像のつかない黒色である。マネの黒に似ているが、もっと含みのある、純粋な黒だと思った。

何事も勉強、死ぬまで勉強、といいながら酒ばかりを飲んで死んでいった人もあるが、とにかくいい勉強であった、これを実践すべくサントン人形を続けている。



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by papasanmazan | 2014-02-19 10:00 | 静物画 | Comments(0)
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